復刊を願っていたら…
2006年 07月 08日
しばらく前になりますが、さる方から小包をいただきました。それには、青土社の「ユリイカ 1979年 8月号」と「きいちのぬりえ」が入っていました。この「ユリイカ」は妖精物語特集で、大好きなトールキンの指輪物語のことや、ヨーロッパの妖精に関すること、果ては宮沢賢治のことまで、様々な記事が載っています。実はMERRY&PIPPINさんのところでこのユリイカのことを知ってから、復刊してくれないかと復刊ドットコムに登録して復刊願いの申請をしていたのです。それが、復刊を見る前にこんなに早く入手できるとは思ってもみませんでした。大感激です。送り主様、ありがとうございました。
まだ全部の記事を読み終えてはいないのですが、オーデンの記事で中矢一義訳の「探求物語としての『指輪物語』」というのをおもしろく読みました。また吉田新一「五つの妖精物語」には、古い妖精物語が紹介されていて、こういう古いのを読んでみるのもおもしろいかも、と思ってみたり、天沢退二郎といぬいとみこの対談「甦るファンタジー」というのに宮沢賢治のことがいくつも言及されていて喜んだりしています。妖精物語に関する記事ではないのですが、短い妖精物語を訳したものに「オパールの話」というのもありました。作者ド・モーガン、訳者矢川澄子となっています。
実は私、20年前の夏を一夏黒姫山の麓で過ごしたことがあって、その時に、この訳者の矢川澄子さんにお会いしたことがあります。今年になって、矢川さんがしばらく前にお亡くなりになっていたことを知り、時の経ったのを痛感したばかりでした。あの夏私は矢川さんのお住まいのお向いに住んでいらした詩人・谷川雁さんのところでお世話になっていました。詩人を志したとか文学少女だったとかいうわけではなく、そのときたまたま留学準備中で他にすることもなかった私は、谷川さんのところに物語テープの編集のお手伝いに伺っていたのでした。谷川邸は和風で、畳の部屋に囲炉裏が切ってあるお宅でしたが、そのお向いの矢川邸は洋風で白い壁のモダンなお宅でした。
何度かお邪魔させていただいた中で、特に思いでに残っているのがお手製のアップル・ルバーブタルトとアール・グレイ・ティーをごちそうになったことで(食べ物で覚えているというのがなんとも、ですが)、ルバーブというものを食べたのも、紅茶にアール・グレイなんてすてきなものがあるということを知ったのも、生まれて初めてのことでした。その頃には、20年後に庭にルバーブを植えてアール・グレイ好きのイギリス人と一緒に住んでいる自分などは想像もしていませんでした。このユリイカの到着で思いもかけず昔のことを思い出してしまっているこのごろです。